業種別事業再生の注意点IMPORTANT POINT
建設業
- 経営不振の原因
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建設業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①市場規模が縮小した結果、売り上げが大きく落ち込んだ
②売上低下に伴い、受注量確保のために無理な受注をし、不採算工事が発生した
③当面の資金繰りのため、低収益・不採算工事を受注し続けざるを得なくなり、赤字が常態化した
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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収益性の高い工事を受注できるようになり、収支が改善すると良いのですが、短期的にこのような優良案件の受注率向上を見込むことは現実的ではありません。売上至上主義から収益性に着目した受注に切り替えるとともに、損益分岐点を引き下げて収益性を上げる方法を模索することになります。
このため、過去の工事実績を確認して不採算工事となる要因を特定したうえで、不採算拠点・発注先からの撤退や固定費・変動費の削減を検討するケース、受注工事の収益性を高めるため、職人1人あたりの生産性を高める仕組みを構築するケース、受注に先立って、適切な収支判断と値付けを行う受注管理体制を構築するケース、安定した工事受注のため、施工工事の品質や納期対応について発注先の信頼獲得を図るケース等の対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。また、工事の実施には、元請企業や下請企業・工事現場近隣の専門工事業者、仕入業者との友好的な関係の継続が必要不可欠です。
例えば、民事再生手続の申立てがなされた場合、実務上、施工案件の出来高部分に対応する請負代金債務は再生債権となり、原則として、協力業者への支払いが禁止されます。そのため、協力業者がその後の施工に難色を示す可能性があります。かかる協力業者の信頼の喪失・取引拒絶に陥らないよう、対応をあらかじめ検討することが必要です。また、建設業を営む企業は、建設重機・工作機械等にリース会社の担保権が設定されていることが多く、事業継続のために、個別に別除権協定の締結のための交渉を試みることになります。
さらに、施主側も、施工能力の低下・納期遅れ、工事完了後に建物にトラブルが生じた場合の責任追及可能性を懸念し、工事請負契約を解除しようとすることがあります。再建型の法的整理であることを前提に、倒産解除条項に基づく解除は無効である旨反論する、工事が継続できるよう交渉する等の対応が必要になります。
建設業について事業譲渡等による事業承継を行う場合、事業譲渡先が各工事に必要な建設業の許可を取得している必要があります。また、工事請負契約の当事者の地位の承継が必要な場合には、相手方である発注者の同意が必要になります。こうした点も踏まえつつ、事業再生の方針やスケジュールを検討していくことになります。
小売業
- 経営不振の原因
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小売業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①競争激化により、売り上げが大きく落ち込んだ
②売上低下に伴い、ロスが増加して利益率が悪化した、または、商品が滞留するようになり売り場の競争力が低下した
③資金繰りが悪化し、店舗投資の借入金の返済が困難になった
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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来客数・売上げの回復のため、競争力を高める方法を模索することになります。限られたコストを適切に配分することが必要です。
具体的には、当該店舗の消費者が求める商品を仕入れる、または独自に開発するケース、不採算店舗からの撤退と採算性の高い店舗の維持を図るケース、仕入先の選抜・集約により仕入原価を下げ、商品価格を見直すケース、競合他社がいない消費者層にターゲットを変更するケース、接客サービスの質等、商品以外の付加価値を作るケース等の対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。
また、不採算店舗の撤退にあたっては、撤退コストが事業を圧迫しないよう、賃貸借契約上の違約金条項の確認・交渉や、在庫保持のコストとキャッシュ獲得の必要性を慎重に検討した閉店セールの実施等に留意する必要があります。他方、採算性が高い店舗について、賃貸人から、法的整理手続の申立てを理由に賃貸借契約の解除を主張されることがあるため、対応をあらかじめ検討するとともに、かかる主張を受けたときには再建型の法的整理手続の趣旨・目的に照らし、倒産解除条項に基づく解除は無効である旨反論する等の対応が必要になります。
運輸業
- 経営不振の原因
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運輸業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①燃料価格高騰の反面、荷主の物流コスト削減要求を受け、適正額の運賃の支払いが受けられなくなった
②運転手の労働条件規制の加重により、人件費が増加した
③このように企業体力が低下していく中で、運送車両等設備の整備費・更新投資が捻出できなくなった
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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コスト削減による原価管理と適正運賃算定による収益管理の方法を模索することになります。運転手、運転車両等のリソースには限りがありますので、個々の案件について割り振るべきリソースとその原価を検討し、収益性向上を図るケース、受注の集約により積載率・実車率向上を図るケース、梱包・在庫保管等運送の付随業務を包括して請け負い、競合他社との差別化や収益性向上を図るケース等の対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。特に、運輸業の継続には、荷主や元請企業、下請企業との友好的な関係の継続が不可欠ですので、対応をあらかじめ検討することが必要です。
また、運輸業を営む企業は、運送車両等にリース会社の担保権が設定されていることが多く、事業継続のために、個別に別除権協定の締結のための交渉を試みることになります。さらに、民事再生手続では、自動車取得税・自動車税・自動車重量税、消費税、社会保険料等公租公課について、随時全額弁済が必要になります。運送車両に対する課税額は高額になりますので、資金繰り及び再生計画作成上、注意が必要です。
トラック運送業について事業譲渡等による事業承継を行う場合、事業譲渡先が必要な許認可等を承継できるかどうかについて、検討する必要があります。例えば、一般貨物自動車運送事業の許可については、原則として、国土交通大臣から承継の認可を受ける必要があります。第一種利用運送事業の登録については承継が認められますが、承継後30日以内に国土交通大臣への届出が必要です。こうした点も踏まえつつ、事業再生の方針やスケジュールを検討していくことになります。
飲食業
- 経営不振の原因
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飲食業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①競合他社の台頭や不測の休業によって売上げが減少し、固定費用の支払いが困難になった
②チェーン店において無計画な出店が繰り返され、不採算店舗が増えた
③食品ロスが多く、低収益が常態化していた
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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回転率または顧客単価の向上とコスト削減方法を模索することになります。
不採算店舗を撤退させるケース、店舗の賃料の減額を交渉するケース、メニューの見直しや食材の在庫・発注管理体制のブラッシュアップによって食品ロスの削減を図るケース、店員教育により開店前後の準備時間を短くする等人件費削減を図るケース等の対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。この点、飲食店では相当程度において利用客の現金支払いが見込まれます。キャッシュレス決済の普及に伴いクレジットカード等での支払いも増加傾向にありますが、これらは回収に多少の期間を要するものの、回収確実性は高いといえます。さらに、飲食業では、多額の設備投資を頻繁に要するといったこともありません。
このように、飲食業は比較的安定したキャッシュ獲得が可能な業種であり、日々の収入の範囲で経費の支払を賄える場合には、事業継続の可能性は相応に高くなります。もっとも、飲食業の場合、現金取引が主で掛け取引が少ないことから売掛金は少額で、貸借対照表でみると手元資産が枯渇気味というケースもよくあります。再生計画作成にあたっては、家賃・光熱費・人件費・借入金返済・租税公課等の支出と売上げについて、短中期的なスパンでの採算を具体的に検討するとともに、不測の休業に備えたキャッシュフローの確保も図る必要があります。
なお、不採算店舗の撤退にあたっては、賃貸借契約上の違約金の定めや原状回復の要否等を検討し、撤退コストが事業を圧迫しないよう留意する必要があります。
製造業
- 経営不振の原因
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製造業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①価格競争の激化に伴う販売単価の下落から売上高・売上総利益が減少し、収益不足となった
②原材料価格の上昇を販売価格に適時に転嫁できなかったことにより利益が減少した
③設備投資に見合う収益が得られず借入金の返済が負担となった
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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売上高が増加し、収益が改善すると良いのですが、短期的に売上高の快復を見込むことは現実的ではありませんので、安定を維持しながら、規模を縮小すること(縮小均衡)を模索することになります。
このため、運転資金を圧縮し、固定費削減による資金繰りの安定をしつつ、営業体制の再構築により顧客基盤の維持拡大を模索するケースや、遊休資産を処分し、過大になった債務の圧縮を図るケース、工場の稼働に合せた人員削減による固定人件費の圧縮、従業員の育成を行い多能工化を進め、必要最低限の陣容で操業できる体制の構築に取り組むケース等の対応を模索することになります。この際、雇用調整助成金や設備投資関連の助成金等の活用も検討します。
また、こうした取り組みでは対応が難しいという場合には、部門縮小を含め抜本的なリストラを検討せざるを得ません。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。また、工事の実施には、元請企業や下請企業・工事現場近隣の専門工事業者、仕入業者との友好的な関係の継続が必要不可欠です。
例えば、民事再生手続の申立てがなされた場合、実務上、施工案件の出来高部分に対応する請負代金債務は再生債権となり、原則として、協力業者への支払いが禁止されます。そのため、協力業者がその後の施工に難色を示す可能性があります。かかる協力業者の信頼の喪失・取引拒絶に陥らないよう、対応をあらかじめ検討することが必要です。また、建設業を営む企業は、建設重機・工作機械等にリース会社の担保権が設定されていることが多く、事業継続のために、個別に別除権協定の締結のための交渉を試みることになります。
さらに、施主側も、施工能力の低下・納期遅れ、工事完了後に建物にトラブルが生じた場合の責任追及可能性を懸念し、工事請負契約を解除しようとすることがあります。再建型の法的整理であることを前提に、倒産解除条項に基づく解除は無効である旨反論する、工事が継続できるよう交渉する等の対応が必要になります。
建設業について事業譲渡等による事業承継を行う場合、事業譲渡先が各工事に必要な建設業の許可を取得している必要があります。また、工事請負契約の当事者の地位の承継が必要な場合には、相手方である発注者の同意が必要になります。こうした点も踏まえつつ、事業再生の方針やスケジュールを検討していくことになります。
不動産業
- 経営不振の原因
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不動産業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては、景気後退・物件所在地域の経済状況の変化による市場の停滞・縮小が挙げられますが、業態別には、不動産分譲業においては、不動産価格の急落、サブリースを含む不動産賃貸業においては、入居率の急落による賃料収入の減少、適正水準より高い家賃を保証していた場合の逆ザヤの発生等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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不動産分譲業においては、未販売物件の早期売却により資金調達フローの改善を図るケース、商品開発にあたり顧客ニーズを分析しなおすことで、将来の販売期間の短縮化を図るケース、不採算店舗を撤退させるケース等の対応を模索することになります。
また、不動産賃貸業においては、リフォームによって顧客求心力を高める、広告について費用対効果を見直す等により入居率の向上及び空室期間の短縮を目指しつつ、固定費である人件費の削減を図る等の対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。
不動産分譲業においては、金融機関からの融資によって資金の大部分を調達しており、担保として不動産に抵当権等が設定されていることがありますが、購入者に物件を引き渡すために、別除権協定の締結等により、かかる担保権を解除してもらう必要があります。また、購入者に既に引き渡した物件について、引渡後も一定のサービスを提供する契約になっている場合、かかるサービス提供義務について、再生債権として届け出てもらう必要があり、注意が必要です。
不動産賃貸業においては、保有する不動産を債権者に担保として提供していることがほとんどです。この業種では、収益性は物件所在地域の状況に左右され、賃貸人には左右されませんので、金融機関としては、早期の売却による債権回収を好む傾向にあります。もっとも、返済の遅滞があくまでも経済状況の一時的な悪化による場合、リスケジュール型の再建計画による自主再建を図れることがあります。
不動産管理業においては、物件所有者に対し預託金を返還できないことになると、管理委託契約を解除され、収益が更に悪化することになりますので、注意が必要です。
宿泊業
- 経営不振の原因
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宿泊業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①海外志向や経済不況等のため国内旅行者が減少し、売り上げが大きく落ち込んだ
②インバウンド客が急激に減少した
③過去の設備投資に対する返済が困難となった
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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集客性と顧客単価を向上する方法を模索することになります。接客、食事、清掃等のコストを削減しすぎると、サービスレベルの低下を招き、顧客離れが加速してしまうため、注意が必要になります。
従業員の就業形態を1年間の変形労働制を採用する等、繁忙期・閑散期に応じた労務体制をとることで人件費を削減する、建物設備・料理・アメニティ等付加価値を作るウェブマーケティングを強化するとともに、自社サイト経由の予約割合を高め、手数料のコスト削減を図る、インバウンド客の集客に特化する等の各社の具体的場面に応じた対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。また、宿泊業を営む企業は、不動産を債権者に担保として提供していることが多いことから、法的整理を選択する場合には、こうした担保権者との調整が図れるかどうかということも再生可能性を左右する重要な要素となります。
宿泊業について事業承継や会社分割等による事業承継を行う場合、事業譲渡先が必要な許認可等を承継できるかどうかについて、検討する必要があります。例えば、旅館業許可・飲食店営業許可・温泉業許可・公衆浴場営業許可・酒類販売業免許・たばこ小売販売業許可については、事業承継を行う場合には改めて許可を取得しなければなりません。許可取得の難易度は許認可によって異なりますので、あらかじめ検討と準備が必要です。
出版広告業
- 経営不振の原因
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出版業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①電子化の進行により、紙媒体出版市場が縮小した
②一時的な売上改善のため、小売店に実売見込みの低い書籍を販売したが、数ヶ月後に返品され売上がマイナスとなった
③取引先の小売書籍店が閉業した
等が挙げられます。広告業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては、
①紙媒体メディアを主な領域としており、電子化の進行により市場が縮小した、
②紙媒体メディア市場が縮小し競合他社の受注競争が激化し、不採算案件が発生した、
③各種ソフトウェアやフリー素材の拡充により、広告業者への外注が減少した、
④インターネット広告がメイン市場になったことにより遠隔地の大手広告業者と競合しなければならなくなった
等があげられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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出版業においては、紙媒体出版市場が今後も縮小し続けることを前提に、収支改善を図る方法を模索することになります。具体的には、タイトル別に収支を見直し、紙媒体での出版継続を検討するケース、電子書籍への移行を検討するケース、不採算レーベル・ジャンルの縮小や撤退を検討するケース等の対応を模索することになります。
広告業においては、紙媒体メディア市場が今後も縮小し続けることとインターネットメディア市場が倍加的に拡大し続けることを前提に、安定した収益を得る方法を模索することになります。具体的には、不採算案件・発注先からの撤退を検討するケース、紙媒体メディアでの経験と実績に基づき、インターネットメディアの比重をあげるケース、安定した案件受注のため、納品広告の品質や納期対応について発注先の信頼獲得を図るケース等の対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。
出版業においては、紙媒体書籍の発行には、印刷業者や製本業者との取引が欠かせないことが多く、法的整理手続を取った後も取引を継続してもらえるよう、対応をあらかじめ検討する必要があります。また、倉庫を利用している場合や運送事業者に運送を委託しているケースでは、商事留置権を理由として、代金の支払いがあるまでは商品の引渡を拒絶されてしまうおそれもあり、注意が必要になります。これらの取引業者への代金の支払いについて、少額債権弁済の許可を得る等の対応が必要です。
広告業においては、競合他社が多いこと、タイムリーな納品が求められることから、発注先がただちに契約を解除し、今後の取引継続を拒絶されることがあります。また、下請業者がいる場合、信用不安により委託中の広告制作を解除される・遅滞されることや、今後の取引継続を拒絶されることがあり、納期の遅れや納品不能を招き、発注先の信頼を喪失することになります。
いずれの点についても、事業継続のため、対応をあらかじめ検討する必要があります。出版業の場合と同様に下請業者への請負代金の支払いについては、少額債権弁済の許可を得る等の対応が必要です。
卸売業
- 経営不振の原因
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卸売業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①小売業者のコスト削減志向により、取引先の小売業者が、卸売業者をより大規模な競合他社に変更した、小売業者が生産者・メーカーと直接取引したりするようになった
②取引先の小売業者が倒産し、売掛金が回収不能となった
③大口注文が突如取り消され、滞留した在庫の廃棄や値引販売を余儀なくされた
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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売掛金の請求・回収をこまめに行い、貸倒れ回避を徹底するケース、支払いが遅滞し始めた取引先の把握・取引継続判断を厳密に行うケース、商品毎の粗利率・回転率等を分析しなおし、発注管理を見直すケース、取引先への配送コスト削減を図るケース、競合他社がいない商品を独自に開発するケース等の対応を模索することになります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。
卸売業を営む企業は、生産者・メーカー及び小売業者との良好な関係を維持できるかどうかということが再生可能性を左右しますので、対応をあらかじめ検討する必要があります。また、倉庫を利用している場合や運送事業者に運送を委託しているケースでは、商事留置権を理由として、代金の支払いがあるまでは商品の引渡を拒絶されてしまうおそれもあるため、対応をあらかじめ検討することが必要です。
卸売業について事業承継や会社分割等による事業承継を行う場合、取扱商品によっては、事業譲渡先が必要な許認可等を承継できるかどうかについて、検討する必要があります。例えば、酒類販売業許可・食肉販売業許可・魚介類販売業許可・乳類販売業許可については、事業承継を行う場合には改めて許可を取得しなければなりません。許可取得の難易度は許認可によって異なりますので、あらかじめ検討と準備が必要です。
美容業
- 経営不振の原因
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美容業を営む企業が窮境に陥る典型的な原因としては
①競争店舗が多く、売り上げ低迷が常態化した
②美容師の退職・独立により来客数が急落した
等が挙げられます。
- 事業再生に向けた取り組み
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美容業には、同一商圏の競争店舗が多く、また、小規模事業者が多いという特徴があり、コストとの兼ね合いを図りつつ競争力を高める方法を模索することになります。
不採算店舗からの撤退と採算性の高い店舗の維持を図るケース、消耗品仕入先の選抜・集約により仕入原価を下げるケース、広告について費用対効果を見直すケース、若手従業員の早期育成・戦力化を図るケース等の対応を模索することになります。労働集約型産業であり、顧客が店舗ではなく担当美容師に付いているため、人件費を削減しすぎることで美容師の離職を招いてしまわないよう、注意が必要になります。
- 事業再生の手法
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再建型の手続とはいえ民事再生等の法的整理による場合には商取引債権者を含む全ての債権者を対象とすることになりますので、商取引上の信用不安から取引の継続に重大な支障を生じさせるおそれがあります。そのため、債権者を巻き込んだ抜本的な対応が必要となる場合でも、商取引債権者に影響を与えず、また、企業ブランドが毀損されにくい私的整理手続が望ましいといえます。
もっとも、私的整理期間中の資金繰りが維持できないケースや金融債権の調整のみでは抜本的な解決が図れないという場合などには、法的整理を選択せざるを得ないといえます。
この場合、再建型の法的整理としては民事再生手続が用いられることが一般的ですが、前述のとおり商取引債権者を巻き込むことになるため取引の維持に対する影響が否定できません。取引の継続を受け入れてくれたとしても、少なくとも当面の間は現金取引を要求されることが多いため、資金確保が課題となります。美容業においては、勤務美容師の協力が事業継続上必須ですので、あらかじめ十分な説明と協議を尽くし、勤務を継続してもらえるよう理解を得る必要があります。
また、カラー剤・パーマ剤・衛生用品等、消耗品の仕入れが事業継続上必須ですので、これらの取引先と良好な関係を継続できるよう、対応をあらかじめ検討することが必要です。
なお、不採算店舗の撤退にあたっては、賃貸借契約上の違約金の定めや原状回復の要否等を検討し、撤退コストが事業を圧迫しないよう留意する必要があります。他方、採算性が高い店舗について、賃貸人から、法的整理手続の申立てを理由に賃貸借契約の解除を主張されることがあるため、対応をあらかじめ検討するとともに、かかる主張を受けたときには再建型の法的整理手続の趣旨・目的に照らし、倒産解除条項に基づく解除は無効である旨反論する等の対応が必要になります。
また、事業承継を行う場合には、従業員との労働契約・請負契約が適切に結ばれているか、違法な美容施術が行われていないか等のコンプライアンス問題をクリアにしておく必要があります。